たしかめるように

たしかめるように。 絶望の淵に立ちなかを覗くと、そこには、当たり前のようにささやかな日常がありました。私は、世界にとって唯の細胞でありたい。

本当のこと


ある日の昼下がり
隣の隣の、そのまた隣の町で
大きな事件がおきた。

わたしたちの町には
なんの影響もなかったけど、
とても大きな事件だったから

パパもママも
おじいちゃんもおばあちゃんも
学校の先生も、習い事の先生も

「許せない」って言った。


なにが許せないのかなぁ?
誰を許せないのかなぁ?

わたしは、毎日楽しみにしていたアニメの代わりに流れ始めた、なんだかツマラナイ、真剣な顔をしたひとが同じことを何度も繰り返すテレビ番組を見るようになった。


たくさんの人が泣いていた。
悲しんでいた。苦しんでいた。怯えていた。

かわいそうだなぁと思った。
とっても、かなしいなぁと思った。


「誰のせいでこうなったの?」
ママに訊いたら
「誰のせいでもないのよ」
って、首をふった。

「なんでこんなことが起きたの?」
パパに訊いたら
「本当の理由は分からないんだよ」
って、眉間にしわを寄せた。


この大きな事件には
「許せない」ことがあるのに
なにが許せないのか言い切ることができないみたい。

犯人はいるけど犯人はいなくて
きっと誰かが悪いけど、誰が悪いのか分からない。
それがひとりなのか、
いっぱいなのかさえ分からない。



真剣な顔をした人たちは
いろいろなことを言う。

同じことを繰り返していたかと思えば
急に、真逆のことを言いだす。
さらに反対のことを言う人もでてきたり、
昨日まで言っていたことを、パタッと言わなくなる時もある。


「ねえねえ、なにが本当なの?」

パパもママも
おじいちゃんもおばあちゃんも
学校の先生も、習い事の先生も

だれも答えてくれない。


「答えられない」のかなぁ...



本当のこと、なんて
誰が知っているんだろう?

本当のこと、なんて
この世の中にあるもの?

本当のこと、なんて
誰が教えてくれるんだろう?

本当のこと、なんて
いつもモヤモヤたばこの煙みたい。

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よく分からなくなって
そのまま寝ちゃった。

次の日には、
誰も、何も、言わなくなった。
モヤモヤさえ、すっかり忘れられて。



これ以上、
どれほど大量の血と涙が流されるまで
「私たち」は このままなのだろうか。